私の地元の先輩が、中学時代に不思議な体験をしたそうなんです。先輩は当時からヘヴィスモーカーで、自宅でも親の前でもお構いなしに吸っていたそうで、ある時に両親から――。
「おい!煙いから吸いたかったら外で吸え!」
こんな風に叱られたんです。なのでその日、先輩は玄関の外にある幅1メートル程の狭い通路に出て、煙草に火を付けました――。
時間は日が変わる程の深夜。突然視界が真っ白になりました――。
「眩しい!おい、何だよ!?誰だよ!?」
真っ暗闇で煙草を吸っている先輩の顔めがけて、誰かがライトを当ててきたんです。やや喧嘩腰に声を上げていると――。
「君はいくつだ?まだ喫煙していい年じゃないだろ?火を消しなさい」
穏やかな口調で諭すように話しかけられたんです。当時ヤンチャ放題していた先輩は――。
「は?うるせーよ!お前誰だよ!」
こんな風に啖呵を切ったそうなんですね。しかしそれには何も反応が無くて、ただただ顔にライトを照射され続けていたんです。
頭に血が上った先輩は――。
「お前いい加減にしとけよ!!」
こう叫びながら、ライトの光源の方に向かって飛び出したんです。しかしその瞬間にフッとライトが消えたんです。そしてその場所には、その周りにも誰1人として居なかったんです――。
家に戻った先輩は、今起こった事をありのままにお父さんに話しました。するとお父さんは、ふと壁に掛かったカレンダーを見上げて一言――。
「ああ……今日はアレか。お巡りさんの命日だったか……」
そうポツリと呟いたそうです。
この日から遡ること数年前。近所の交番で警察官が惨殺されると言う事件がありました。小さな頃から札が付くほど悪かった先輩は、子供の時によく、そこに居た駐在さんにお世話になっていたそうなんです。
まさか……先輩は頭に、その殺された警察官がさっきの奴だったりしないよな?そんな考えがよぎって、背筋がサーッと涼しくなったそうです。
そんな体験があった直後、放置されたまま残されていた無人の交番が解体されたそうです。その場所には今、ただの賃貸マンションが立っているそうです。