ホテルの4階

投稿者 – もらさん様

 僕の友人で感が強い人がいます。彼は高校の時に格闘技系の部活に入っていました。学校自体がスポーツ強豪校で、彼の部活もかなり強かったらしく、全国大会に出場することになったんです。

 これは友人がその時に宿泊した、あるホテルで体験したお話です――。

 実はそのホテル、4階の○○号室に霊が出る……という噂や、エレベーターに乗ると自分以外の何者かが乗りこんでくる……等の噂があったらしく、所謂いわくつきという場所でした――。

 ホテルの5階の大広間で、部活の先生を始め先輩、後輩、同級生達と、全国大会の打ち上げをしていた時、後輩の1人に声を掛けられました――。

「先輩!ちょっと連れションいきません?」

 そのホテルは5階、4階に共用のトイレが無く、3階まで下りなければなりませんでした。なので友人は後輩と2人で世間話をしながら3階まで降りて行って、用を足しました。そしてエレベーターに乗り込み、5階を押しました。

 エレベーターのドアがサーッと閉まり、昇り始めたのを身体で感じました。しかしエレベーターは5階まで上がることなく、4階で停まったんです。

 従業員か他のお客さんかが4階で乗ろうとしているのかな?そう思いつつ開いたエレベーターのドアの先を見ると、誰もいなかったんです――。

「そーいえば先輩って霊感あるんすよね?」

「ここ出るって噂あるじゃないすか?何か見えたりするんすか?」

 後輩に聞かれましたが、友人には何も見えませんでした。そうしている内にエレベーターのドアがスーッと閉まりました。しかしすぐにまたドアが開くんです。

 さすがにおかしいなと思った友人は同時に、何かおる……という気配を感じ始めました。

 それからもエレベーターのドアは開いたり閉まったりを繰り返していました。このままでは埒があかないと思った友人は、一旦3階に戻ろうと考えてドアが閉まったタイミングで3階を押しました。でも3階のボタンに明りが点かない。後輩はかなり怖がって軽くパニック状態になり始めました。

 友人もこのままエレベーターに乗っているのは何かヤバイ気がすると思い、次にドアが開いたら一旦降りて階段で5階に戻ろう。そう決めました――。

 次にドアが開いたので後輩と共に飛び出そうとすると、目の前に人影が現れました。ワッとビビってこれはもうアカン!と思いましたが、よく見るとその人影、普通の人だったんです。おじさんで浴衣を着ている――。

「あ、どうも~」

 そんな感じで軽く会釈されたのと、後輩にもちゃんと見えているようだったので、人間に間違いないと、そう思って安心しました。

 おじさんはエレベーターに乗り込んできて5階を押しました。そしてドアが閉まり始めたその時、友人と後輩は見てはいけないモノを見てしまったんです。

 おじさんの後ろにピッタリと憑ける様に、黒い人影がもう1人乗り込んできたんですよ。

 2人は息をのみ、固まってしまいました。今度はちゃんとエレベーターが動きだし5階に向かって昇り始めました。おじさんは2人の後ろに立っていました――。

「君たちは、あれか!全国大会の生徒さん達かい?」

 おじさんに声を掛けられました。後輩がすかさず後ろを振り向き――。

「ああ、そうなんすよ~」

 そんな風に答えた後、後輩の顔が見る見るうちに青ざめていったんです。心配した友人もおじさんの方を振り向いてみました。すると、おじさんの頭の横で黒い人影がボソボソボソボソ……と何かを呟いているんです――。

 5階に着いてエレベーターのドアが開きました。おじさんはエレベーターを降りた後――。

「んじゃぁ、私はアッチだから……」

 そう言いながら2人の大広間とは別の宴会場へと消えていきました。そして黒い人影も、おじさんにピッタリと憑いたまま去って行ったんです。

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