私には10年程前から現在も続いている、とある気持ち悪い体験があります。
ある人物をよく見かけるのです。毎回違う場所、違う時間帯で見かけるのですが、何というかその人……。ちょっと普通じゃないんです――。
服装は一昔、二昔前の80年代的な感じで、髪型は黒髪パーマ。所謂オバサンの様な風貌で、その人はよく自転車に乗っています。
いつもは遠距離から「あ、またいた……」という感じで見ていたのです。しかしある日に、たまたま接近した事がありまして。
すれ違いざま、その人が私を見て――。
「ニタァァ……」
って、笑ったんですよね。ものすごく怖かったです――。
先日も見かけました。
スーパーで買い物をしていると、向こうの方にあのオバサンを見付けました。すると向こうはこちらの方にクルッと向きを変え、物凄いスピードでこっちに近づいてきたんです。
速さで言うと世界陸上の競歩くらいでしょうか。しかも――。
「ベチャベチャベチャベチャ……」
そんな足音を立てながら近づいてきました。オバサンの靴はスニーカーだったと思います。踵を踏んづけて履いていた様で「ベチャベチャ」と音が鳴っていたのかも知れませんが――。
「ニタァァ……」
その時も、すれ違いざまにそんな顔をしていました――。
直近でオバサンを見かけたのは、銀行のATMです。
私は順番待ちに並んでいて、自分の番が来たので用を済ませました。しかしその瞬間、後ろに異様な気配がしたので振り向くと――。
「ニタァァ……」
オバサンが私のすぐ真後ろに、ピッタリと付ける様に立っていたのです。先ほどまで後ろに並んでいたのは、違う人だったはずなのですが――。
そのオバサン。私に対して取ってくる行動もですが、気味が悪いのはそれだけではないのです。顔が、とにかく「赤い」のです。
まるで血まみれの様な、「赤黒い」と言った方が近いかもしれません。
さらに、考えるだけでも肩が震えるのですがそのオバサン、1人じゃないんです。
私の家族もオバサンを見かけるのです。全く違う場所で。今までの目撃例で考えると、現時点で同時に3人は存在している事になるのです。
多分、その赤黒い人達は人間だと思っています。いや、私が人間だと信じたいだけなのですが――。