河の魔物

投稿者 – 所長様

 子供の頃の夏休みの思い出。家族4人で山の方に出かけて、河原で水遊びさせられたことがあった。

 俺は確か小2とか小3だったと思う。まだ幼稚園児の妹と一緒に河の中で遊んでいて、水位も浅かったので両親は河原で俺たちを眺めていた――。

 河の中で他より少し深く、腰くらいまで水位がある所に行ったときに、足の裏に違和感を感じた。当たり前の事だが他の場所は川底がゴツゴツした石で、硬かった。しかしこの場所の川底はなんというかゴムっぽくて弾力があった――。

「なんだこれ、気持ち悪いなぁ……」

 そう思った俺は、何なのか確かめようと踵でゴンゴンと叩いてみた。するとやはりゴムっぽい感触で石ではなさそうだ。

 なんとなくもう一度、踵で足元を叩いてみたら「ズボッ」と何かを踏み抜いた感じがした。

 その瞬間いきなり片脚が川底に沈んで、太ももまでハマってしまった。股が裂けるんじゃないかと思う痛みと共に、自分の顔も水の中に沈んでしまって溺れるような形になった。

 ヤバイ!ヤバイ!と焦りながら、自由に動く両手と片脚で必死に足を引っこ抜こうともがいた。すると突然「ヌルッ」とした感触と共にハマっていた足がスッポリと抜けた――。

 泣きそうになりながら妹を連れて両親の所まで行き、一部始終を話した。すると話を聞いた両親の顔がどんどん青ざめていって、汚いものを触るかのような手つきで俺の脚を触りだしたんだ。

 俺もそこで初めて気付いたのだが、川底にハマった脚、全体的に紫っぽく変色して、ところどころに手形の斑点の様な気味が悪いモノが付いていた。

 特に痛みとかは無かったし、問題なく走ったりも出来たので、当日は無理だったが後日病院に連れて行かれた。内出血みたいになっているけど問題は無さそう、時間が経てば奇妙な痕も消えるだろうと言われた気がする。

 それからもう何十年も経ち、俺の脚には痕も何も残ってない。

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