私の中学の同級生の滝沢が、変なモノを見たと話してくれたんです。学校から家に向かって１人で歩いていて、自宅まで後１分も無い。そんな時にふとある女が目に入りました――。

　正面の数メートル先の一軒家から、白いワンピースを着た女がスッと道に出て来てこちらに向かって歩いてきます。

　その日の天気は曇天。太陽も出ていなければ雨も降っていないのにその女、傘をさしているんです。暗い色見の赤い傘。その傘で顔が隠れてしまっていたのですが、綺麗な長い黒髪がなびいているのが見えました――。

「なんだか見かけない女の人だな～……」

　滝沢はそんな事を考えながら女とすれ違い、一軒家の前を通りがかった時、ある事に気が付いたんです――。

「あれ、この家……ずうーっと前から廃墟だったじゃないか……」

　あの女、何でこんなところから出てきたんだ？そう疑問に思った滝沢は、クルッと後ろに振り返りました。

　するとその瞬間……、同じタイミングで女もこちらを振り返ってきて、直後にバサッ！！っと音を立てて、長い黒髪が切れて飛び散ったんです。

　滝沢はそれを見て驚いてしまって、思わず声を上げながら走って逃げたそうです――。

　ちなみにその女、振り返った時にはまだ傘で顔がほとんど隠れていたそうなんですが、ニヤッと笑った様な口元だけが覗いていたそうです。