これは最近の話なんですが、凄く仕事が忙しくて帰宅も遅く、ご飯を食べてすぐ寝る。そんな日々なんです。また、職場の人間関係で悩むところがあり、ある同僚の男性から嫌な思いをさせられていました。本当に憂鬱な日々でした。
その日もいつも通り自分のベッドに入り睡眠。すると、自分がある知らない街の部屋に居て、ハンドガンを手に持っている事に気が付きました――。
この街は普通ではなく、廃墟が多いスラム街の様な場所。どこからともなく音が聞こえてきました――。
「ドッカーン!ドッカーン!」
「ダダダダダ……ダダダダダ……」
銃声やら爆弾の音が鳴り響いているんです。
次に私はあることに気が付きました。雨が降っている。しかし雨の感覚が無いのです。雨の冷たさや、触感や、降りしきる音など――。
「この状況で、自分はどうするべきなんだ……」
理由はよくわからないが、直感的に今、自分が危機的な状況にあると察した私は、まずは逃げなければと考えました。
とりあえず今いる部屋から出ようと思ったのですが、なんと部屋にはドアが無く、外に出る事が出来ない。部屋にあるのは窓のみで、外を見ることは出来ました。すると、人がワラワラと居るんです。そして私が居るこの建物に向かって押し寄せてくるんです――。
「なんだかヤバイ……どうしようどうしよう」
すると間もなく――。
「ガタン!ガタン!」
すぐ近くで音がする。すぐそこまで何かが迫っている。ドアが無いから逃げ道も無い。なんとかしなければ。
もう一度窓から外を見てみると、自分が居る場所は相当高い場所のようで、飛び降りたら間違いなく死んでしまう。しかし、このままここで何某かにどのような方法で殺されてしまう様な自体に発展するのか……。そうなるよりは自ら命を断った方が幾分かマシだろう。
そう決意し、窓に手をかけた瞬間――。
「ダメ……ダメ……」
声が聞こえた方を向いてみると、そこには白い服を着た長い髪の女性が立っていました。距離があったので顔は良く見えません……。
「ワタシが倒してあげるから……ワタシが倒してあげるから」
「だから、諦めないで……おねがい、諦めないで……」
一体この女、何を言っているんだ?とそう思ったのも束の間、突然体が動かなくなってしまいました。さっきまで自由に行動出来ていたのに、動けない――。
「何だコレ!金縛りか!?」
足に違和感を感じた私は目を下に向けました。するとさっきの女性が私の両足首掴んでいて――。
「うわぁっ!!」
驚いて声を上げた直後、今度は女の顔が目の前に現れました。超至近距離にも関わらず何故だか顔が分からない、認識出来ないんです――。
「おねがい……諦めないで」
女がまた一言そう言うと、急に辺りが暗転し、強制的に現実に引き戻されました――。
窓から朝の爽やかな日が射し込み、目を開ける。時計を見ると既に出勤時間を回っている――。
「嫌な夢を見たなあ……」
そう物思いにふけながら準備をして、急いで会社へと向かいました。するといつも以上に慌ただしい職場。そしていつも居るはずの同僚の姿が見えない。職場で私を苦しめていた彼が見当たらない。
他の同僚から声を掛けられ、彼が今朝亡くなっていた事を知りました――。
昼の休憩時間。屋上にタバコを吸いに出ると、突然聞きなれた彼の声が聞こえました。もう今朝には居なくなってしまったはずの彼の声です――。
「これで……逃げられると……おもうなよ……」
昨晩私が見た夢。それが何か関係があるかは分かりません。しかし私はそれを聞いて、背筋にゾッとするようなモノが伝う感触を覚えました。
そして私は、その日家に帰り、悶々としながらお風呂に入っていると、ある事に気が付いたんです。自分の両足首に、クッキリと人に掴まれた様な手の痕が付いていたんです。