これは、俺が中学校１年生の時に体験した出来事。家族とお墓参りに行った時にある奇妙な光景を目にしたんだ――。
その日は墓地に到着した時間、まだ俺達の家族しかいなかった。一緒に行ったのは、父親、母親、姉、祖父、叔父、従妹、俺を含めて７人だった。
ちなみにその墓地はとても古い所だった。大半の墓石が石碑ではなく木製だったり、土葬のモノもたくさんあった。
また此処には１つ特徴があった。墓地内の納屋になぜか、昔に長良川鉄道（岐阜県）で使われていたと謂われる「古い木製の車輪」が置かれていた。
その車輪、我が家に関するちょっとした逸話があったんだ。昔、地元の女子高生が電車に轢かれた事故があったそうで、実はその事故の第一発見者が俺の叔母だった。さらに女子高生を轢いた車輪こそが、例の墓地内の納屋に置かれている「古い木製の車輪」であるらしい――。
墓地に到着してからしばらくの間、御供え物を変えたり、お墓周りの草刈りをする等の作業をしていた。すると、不意に１台の車がやってきたのが目に入ったんだ。なんとなくその車を見ていると、車からおばあさんが１人、花と水を持って降りてきた。
おばあさんはお供え物をしたらすぐに車に戻って、そのまま帰ってしまった。しかしおばあさんが車に乗り込む時に、墓地の奥の方から若い、十代半ばくらいに見える女性がスッと出てきて、そのまま一緒に車に乗り込んでいった。
どうも若い女性に対して違和感を感じてしまった俺は、その光景を不思議に思って帰り道に家族に確認したんだ。すると家族全員が車に乗ってきたおばあさんの事は見てはいたが、帰りに一緒に乗っていった若い女性のことは、祖父、母親、従妹、俺の４人にしか見えていなかったんだ――。
何となくだが、あの若い女性はもしかするとあの「事故に遭った女子高生」で、車に乗ってやって来たおばあさんは彼女の家族、例えば母親だったりするのだろうか？そう思った。それとも、もしもそうでなかった場合。あの若い女性は一体何なのだろうと考えると……凄く気味が悪かった。
