先日の事。私は仕事の関係で朝イチに東京都の青梅市にある物件に、伺う事になりました。その日に乗っていた社用車にはカーナビが付いていなかった為、スマホのGoogleのナビを使って車を走らせていました――。
約束の時間は9時。目的地の付近まで来た時には、時計は8時45分を示していました。そんなタイミングで、Googleナビは2つのルートを提案してきました。
1つ目のルートは直進して5分程で目的地に到着するルート。2つ目は右折してからグルリと大回りして15分程掛かるルート。
私は迷わずに1つ目の5分程のルートを選び、直進して行きました。
しかしこのルート。そのまま進んで行くと道幅はドンドンと狭くなっていき、辺りは住宅街から抜けてほとんど人気の無い寂しい風景に変わっていく。
遂には車1台ギリギリの道幅になってしまい、道路のアスファルト舗装が無くなって目の前には山門が現れました――。
「この先150m、目的地は右側です」
Googleナビはこの道を直進していけば目的地に到着すると、そう言っています。
私は少しナビの精度を怪しみながらも、とりあえず150mで到着するならば進んでしまった方が早いと、ギリギリの道幅に慎重にハンドルを切って進んで行きました――。
しかしその直後にハッと、物凄い違和感に襲われたのです。自分が乗っている車のすぐ右側スレスレ……。お墓なんです。いつの間にかに私は墓地の中に入り込んでいたのです。
そしてさらに、車のすぐ左側スレスレはガードレールも無い大きな段差。運転席からはその下がどうなっているか見る事が出来ず、タイヤを踏み外したら横転待ったなし――。
「この先150m、目的地は右側です」
いやいや無理でしょ!と思いながら車を停め、一度降りて車の周りの道路がどうなっているか確かめようとしました。しかし道幅がギリギリで、右は墓石が在ってドアが開けられず、左はスコンと高い段差で足場が無く降りられない。
仕方なく墓石と墓石の間に無理やりドアを開けられるスペースを見付けて、体をねじ込むように外に出ました――。
「この先150m、目的地は右側です」
普段からGoogleナビを使っている私としては、気持ちが悪く思うぐらいに連呼するのです――。
「この先150m、目的地は右側です」
「この先150m、目的地は右側です」
「この先150m、目的地は右側です」
ひたすらこれを繰り返すナビを片手に、私は走って道の先まで見に行ってみる事にしました。そして150m先に到着すると……。そこにはもう道は無く、もしも車で走ってきていたら、転落してしまう様な場所だったのです。
そしてスマホのナビでは、しっかりと目的地に到着している表示になっているのに――。
「この先150m、目的地は右側です」
私は気味が悪くなり、Googleナビをそっと閉じました――。
その後、私は泣く泣くギリギリの道幅をひたすらバックして戻り、なんとか元の道路に復帰しました。先ほどの2つ目のルートを再検索し、なんとか無事に物件に到着する事が出来ました。もちろん仕事の待ち合わせには遅刻してしまいましたが……。
後日この出来事に遭遇した場所を、ストリートビューで確認してみました。するとそこである事を知りました。
最初にルートが2つにわかれた分岐。この目の前にはお寺があって、そこにはしっかりと――。
「進入禁止」
道のど真ん中に看板が設置されていて、普段は普通に車なんて通れない様になっていたのです。それを見た瞬間、私の背筋を冷たいモノがスッと流れて、少しヒンヤリとしてしまいましたね。