これは数年前に、私が体験した出来事です。
東京都の東大和市にある多摩湖。たっちゃん池という心霊スポットや、過去に一家心中事件が起こったと言われる廃墟があったことで有名です。
他にも廃墟マニアが好む様なラブホテルの廃墟や、魔人坂と呼ばれる道は下っているのに登って行くように見える坂なども。
心霊スポット好きには事欠かないそんな場所です――。
ある日の深夜。久々に会った友人とドライブがてら、この多摩湖周辺を車で走っていました。
東京方面から埼玉方面へと走って行くと交番があるのですが、そこを通り過ぎてから2~3分程行ったところで――。
「うわっ!!」
私は思わず声を上げながら急ブレーキを踏みました。目の前に突然、道に座り込む人影が現れたのです。
その時、私達は談笑しながら運転していましたが、夜の暗い峠道です。私はもちろん助手席の友人も、常に前方を見ていました。
急ブレーキを踏む寸前まで、確かに何もなかったはず……。しかし、瞬間的に私たちの眼前。道路のど真ん中に座り込む人影がフッと沸いて現れたのです。
タイミング的に止まり切る事が出来ず、タイヤのスキール音と共に車はその人影を通過してしまいました。
車が停止して、私達はハッとしました。
何かにぶつかった様な衝撃も無ければ、衝突音もしなかったのです。私は友人と顔を見合わせて、互いに確認し合いました――。
「確かに何か現れたよな……?」
「うん。俺も確かに見た……」
その後、私達二人は車を降りて、車の周りから前後数十メートル周辺まで時間を掛けてゆっくりと確認しました。しかしどんなに探してみても、何の痕跡も見付ける事は出来ませんでした――。
あの夜。私達の見た謎の人影は、膝を折って抱える「体育座り」の様に座っていました。
もしかしたら、この多摩湖という場所がこういうモノを私達に見せたのか。それとも何処でも起こりうる事なのか。
今になって考えてみても、私達には判りません。