これは数年前に、私が体験した出来事です。
東京都のあきる野市にある旧小峰トンネル。過去の陰惨な事件に絡む噂から、心霊現象の類まで後を絶たない心霊スポットです。
現在は車両の通行が出来ないよう封鎖されていて、アスファルトも痛み放題、雑草も生え放題と、荒れている廃道になっている小峰峠。ここの中腹にある旧小峰トンネルに、数年前。まだ車で通行出来た頃に友人と二人、深夜にドライブに出かけました――。
心霊トンネルというだけあって雰囲気はもちろん、トンネルの真ん中で停車してクラクションを鳴らすと何かが起こる~みたいな噂話もあったようです。
私達は後ほどそういった事もしてみようとは考えつつも、最初は普通に通過してみる事にしました。
対向車が来たらすれ違いは難しい様な狭いトンネル。安全な速度までスピードを落とし、ゆっくりと中程まで進んで行きました。すると――。
「サワサワ……サワサワ……」
突然私の両脚の膝下に、何か動物が体を擦りつけて来るかのような感触が走りました。毛むくじゃらの小動物の様な感じです。
「えっ!?」
私はその時普通の長いズボンを履いていて、膝下を露出していなかったので思わず気味が悪くなって声を挙げました。
そのままトンネルを通過しきったところで停車して、助手席の友人に先ほどの膝下の感触の事を話してみると――。
「まじかよ……俺も同じの感じたんだけど……」
ここで一層と気味が悪くなってしまったのですが、せっかく遠出して此処まで来たのだから……と。Uターンして、もう一度逆方向に通過してみる事にしたのです。
先ほどと同じようにゆっくりな速度でトンネルに進入し、中程まで進んだところで――。
「サワサワ……サワサワ……」
再び例の動物が体を擦りつけて来るかのような感触が……。その直後友人の方を向いてみると、彼もこちらを向いてコクッと無言で頷いたのです。
それを見た私は無言でアクセルを踏み込んで、そのまま小峰峠を下って行きました――。
元来あの旧小峰トンネルは、女性の霊が目撃されるということで有名な心霊スポットでした。私達の両脚に擦りついてきたあの動物の様な感触は一体何を意味しているのでしょうか。
私達には知る由もありません。