私の友人が、中学時代に体験したという話を聞かせてくれました。
彼女が通っていた東京都A区の中学校の行事の1つとして、4~5人ごとの班に分かれて地元の歴史を調べて、そのレポートを作るという授業がありました。そこで彼女の班は、あるお寺を題材に選び、お坊さん達に話を聞こうとさっそく向かったのです――。
このお寺は、日本史上の著名人などのお墓がある様な所で、一部ではパワースポットなどとしても扱われているそうです。一通りお寺にまつわる歴史の話を聞き終えた後、帰る間際にある提案をされました。
「有名な介錯人(かいしゃくにん)が首切りに使っていた刀が奉納されているから、興味があったら見学していきませんか?」
その昔、幾人もの罪人の首を落としてきた刀。この強烈なインパクトに感化された班のメンバーは、是非お願い致しますと意気揚々とお坊さんの後を付いて行きました。彼女1人を除いて――。
ある場所に通された彼女達がソワソワとして待っていると、お坊さんが3人がかりで刀を運んで来ました。非常に妖艶な魔力を感じさせるその刀は、非常に重量があるようで、1人ではとても持ち運べない様な代物。
班のメンバーが1人ずつ順番に触らせてもらったのですが、彼女はどうも嫌な予感がしたらしく最後まで触ろうとしませんでした。しかし、1人だけ断り続けている事に対して、少し空気を読んでほしいと言うメンバーの意向が出てしまいました。仕方が無いので彼女は気が進まないながらも、一瞬だけ刀に触れることにしたのです。
恐る恐る指を伸ばして、チョンッと刀に触れたその直後――。
「バタッ」
彼女はプツンと意識が途切れたかと思うと、その場に倒れ込んでしまったのです――。
数分後、意識を取り戻した彼女。倒れる前後に何があったのかを班のメンバーに聞いて、刀に対して感じていた嫌悪感が恐怖であった事に気が付きました。
彼女が意識を失う寸前。指で刀に触れたかと思ったその直後、ヒョイッっと片手で軽々持ちあげたのです。男性のお坊さんが3人がかりで重々しく運んでいた刀を、たった一人の女子中学生が。
彼女は刀に触れた瞬間、何とも言い難い様な禍々しい何かが体に流れ込んできた感覚があったそうです。果たしてそれは一体何だったのでしょうか。その刀で首を切り落とされた幾人もの罪人によるモノなのか、それとも介錯人として切り落としていた側によるモノなのか。