僕が通っていた学校は、よく怪現象が起こるところだったのです。例えば、物が勝手に動くだとか、水が勝手に流れるだとか。そういった現象は日常茶飯事でした。
また、校舎は創立以降現在まで何度も増築を繰り返して、ところどころ極端に古めかしい区画と、新しい綺麗な区画とがまばらにあるといった感じでした。
古めかしい区画に教室が一つあるのですが、そこは他の場所と比べて、飛びぬけて雰囲気が暗く不気味なところでした。それもあってか、ここでは際立って怪現象が多く確認されていたのです――。
これは先輩から聞いた話です。ある日、その教室で授業中の先輩がお腹を下してしまい、最寄りにあるトイレに駆け込みました。そのトイレもまた色々と噂があるトイレで、生徒達の間では絶対に1人では行かない場所とされていました。
しかし、授業中にトイレに抜け出す状況と、今にも漏れてしまいそうという緊張感から、先輩は仕方なくそのトイレに駆け込むことにしたのです。
なんとか漏らさずにトイレに辿り着き、個室に飛び込んでから出すものを出して、無事に一息つきました。そして尻を拭こうとトイレットペーパーのホルダーの方に手を伸ばしたその時、ゾッとする事に気がつきました。
安心してください。ちゃんと紙はありましたよ。ゾッとしたのは、それではないのです。学校のトイレットペーパーのホルダーって、銀色の金属製じゃないですか。鏡みたいに映りこむんですよね。
手を伸ばしている自分の後ろに、見た事も無い女が一人立っているんです――。
実は先輩、多少霊感があったらしいのです。なので、そこではパニックにならずに、あくまで気付いていないフリをしたのです。しかし内心は変な緊張感で心臓がバックバクと波打っています。焦りつつもソソクサと尻を拭ききって、すぐにその場を立ち去ったそうです。
以上、僕が通っていた学校での不思議なお話の一つでした。