不気味な橋

投稿者 – 仔犬神スケキヨ

 これは友人から聞かせてもらった、ある大学生「K君」の体験談です。

 ある年の春、大学に晴れて現役で入学したK君。振り分けられたゼミで同じ地元の「U君」と出会いました。U君とは通っていた小中学校が隣に位置する様な近所に住んでいましたが、今まで一度も出会う事がありませんでした。

 地元トークで直ぐに意気投合したK君とU君。さっそく大学終わりに遊ぼうという話になり、その日の夜にU君の家で集合する事になったのです。

 K君の家からU君の家までは自転車で10分程の距離。夜も更けてきた21時過ぎ頃、家を出て人気も無くなってきた夜道を走り出しました。

 K君にとっては地元で良く見知った道。しかし以外にも普段、その道を通った事が余り無かった事に気が付きました。

 途中、河に掛かる橋に差し掛かりました。ここは新旧の橋が隣接している珍しい作りになっている場所で、K君は何となしに「もうすぐ着くかな……」とふと頭に浮かべた途端――。

「ガシャンッ!!」

 突然自転車のペダルを右足で踏み込む手応えが無くなったかと思うと、チェーンが外れて漕げなくなってしまったのです――。

「うわぁ、マジかよ……」

 仕方なく自転車から降り、チェーンをはめ込もうとイジリだしたK君。カチャカチャと数分格闘していると、何処からともなく声が聞こえてきたのです――。

「ボソボソ……。ボソボソ……」

 何となくか細い女性の囁き声の様なものです。ハッとしたK君は、クルクルと辺りを見回して声の主を探しました。しかしこの場所は街灯はあるもののとても暗く、数メートル離れるとまるで墨で塗りつぶしたようにドス暗くなってしまって視界が利きません。

 嫌な気分と寒気をもよおしたK君は、さっさとこの場を離れようとあせりつつチェーンを元に戻し、さっさと走り去ったのでした。

 その後すぐにU君の家に辿り着き、夜なのでインターホンは押さずに携帯で呼び出しました。すると直ぐにU君が玄関から出てきたのですが、何故だかキョトンとした顔をしてK君をジッと見つめてくるのです――。

「ん?どうかしたの……?」

 不思議に感じたK君が訊ねてみると――。

「いや……ここに来るまでに何かあった?」

 逆に質問を返されたので――。

「ああ、途中の橋の上でチャリのチェーン外れちゃってさ。遅くなっちゃった」

 すると少し間を空けて――。

「そっか……。うん。まあ上がりなよ」

 そう言って家の中に招き入れられました。

 なんだか不気味な雰囲気を感じたものの、その後2人でゲームをしたり爆笑したりと遊んでいる内に、そんな気分も何処かに飛んで行ってしまったのです。

 それから数日後、K君はフットサルサークルに所属し、U君を含めた友人たちと楽しいキャンパスライフを謳歌していました。

 そんな折、ある異変に気が付いたのです――。

「最近やたらと右足に怪我をする……」

 最初は本当に軽いモノでした。テーブルの角に右脛をぶつけてアザになる。物を落として右足の指を痛める。何に当たったか覚えていないが、気が付くと右脹脛辺りに擦り傷が付いている等……。

 生活する上で特に支障が無かった事もあって特に気にせずにいたのですが、ある日にそうも言っていられない事態に発展します。

 フットサルのサークル活動中にちょっとした接触プレーがあった直後、右足首の靭帯を損傷する大怪我を負ったのです。

 あえなく松葉杖生活を余儀なくされたK君。そんな状態になってもなお、事あるごとに物が右足に当たったり、怪我をする要因になりうる様な事が続きました。そんな最中ある事に気が付き始めたのです。

「右足に痛みを感じた時、微かにボソボソと人の声が聞こえる……」

 どこかで聞き覚えのある、印象に残っている女の囁き声の様なものでした――。

 K君は心霊やオカルトの類は信じていないタイプです。なので余り気にしない様にしていたのですが、ある日にたまたまU君とランチをしている時、ふとした拍子に世間話で笑い話の様にこんな事を話したそうです――。

「何か俺さ~呪われてるのかな?右足ばっかり怪我して……んな訳ねーか!」

 この話題はそれだけで終わり。そう思い次の話題に移ろうとした時、U君が低い声で静かに訊ねてきたのです――。

「お前さ。初めて俺ん家来た日、何があった?」

 K君はハッとしました。何故なら、何となくそんな気はしていたけれども、そんな事ある訳が無い。しかし心のどこかであの日のあの時の事が、どうも気になってしょうがなかったからです。

 どうせ話しても信じてもらえないであろうと思いつつ、試しにU君に話してみたのです。あの日の橋の上での事、右足の怪我の事、ボソボソと聞こえる囁きの事。すると思いもよらぬ返事が返って来たのです――。

「実はさ俺、こういうのはあんま人に話さない様にしてるんだけど……」

 U君。所謂「感の鋭い」人だったのです。何かが見える事があったり聞こえる事があったり。しかし本人いわく「強い訳じゃない」らしく、何となく分かる程度だと言うのです――。

「お前があの日家に来た時、後ろに立ってたんだよ……。女が」

 K君は唖然としました。まさに開いた口が塞がらないといった状態でした――。

「今でもたまにさお前の後ろに居たり居なかったりするんだよ……」

「それで居る時にはさ、お前の耳元にボソボソ囁いてるんだよ……」

「痛い……痛いでしょ……って」

 背筋が凍りつきました。全身の毛穴が泡立つ様な感覚でした。気持ちの悪い汗が額や脇からあふれ出てきたのです。そこでもう1つ聞かなければならないと思ったK君は――。

「今は、居るの……?」

 生唾を飲み込んで答えを待ちました。すると――。

「今は…………、居ないね」

 それを聞いてホッとすると共にドッと疲れたK君。そこでその女がどんなモノなのかを聞いてみたのです。

 そこで分かったのは、U君が女を見るのは毎回では無い事、おそらく橋で何かあったのではないかという事、そして女が居る時は立っているが「右足の膝から下が見えない」と言う事でした。

 U君が言うには、彼にはお祓いとか徐霊みたいな事は出来るはずもなく、取り返しがつかなくなるような事になる前に、神社とかお寺を訪ねて相談した方がよいとの事でした。

 K君としては、突然こんな話になって、U君が言う事を疑っている訳ではないが、100%信じられる訳でもなかったのです。なのでU君の忠告を聞き入れる前に、まずは例の「橋」についてちょっと調べて見ようと考えたのでした――。

 最初に小中学校の同級生で、今も連絡を取り合っている友人数人に連絡を付けてみました。すると何人かが――。

「あ~、あそこ!心霊スポットとか言われてるよね」

 K君は地元に居ながら全く知らなかったのです。本人にそういった類のモノに興味が全く無かった事もありましたが、友人たちが言うには割かし有名な話の様でした。

 さらにインターネット等で情報を集めてみたところ、やはりあの橋は心霊スポットとしてそこそこ知られた存在だそうで、昔から事故が多く、霊の目撃談等も絶えない様な状態だったのです。

「親子の霊が出る」

「老婆の霊がうろついている」

「近くのお地蔵様に呪われる」

 等など。色々と情報を集めている最中、1つ気に懸かる話を聞く事がありました。それは――。

「今から何十年前にもなるが、会社帰りのOLがトラックに撥ねられたらしい」

「飛ばされた後さらに右足をもう一度轢かれて潰れてしまったらしい」

 そんな話でした。

 K君は思いました。ひょっとしてこの話が本当で、これが今の自分に出ている影響の原因なのでは?

 その後K君の右足首は回復し、元気にフットサルも出来るようになりましたが、その後もちょくちょくと右足を怪我する事があったそうです。

 U君の助言に従い、お払いなどにちゃんと行ったのかは不明だそうです。

 ただ、最後にOLの事故の話で1つ引っ掛かる事がある。この話を教えてくれた友人が言いました――。

「そのOLさ、事故に遭って右足無くなったけど、死んではないんだってさ」

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