偶々

人怖 アイキャッチ
投稿者 – しんた様

 ウチの敷地内に新築を建て、そこに移り住んだばかりの時。ある事件が起きたのです――。

 あれは僕が21歳の時の夏でした。僕は大のクーラー嫌いでして、普段は部屋の窓を開け、網戸の状態で寝ていたのです。

 しかしあの日は、あの日だけは……。異様なほど暑いなと思い、我慢できずに窓を閉め、カーテンも閉め切り、クーラーをかけて寝ていたのです。

 段々と涼しくなってきて、いい気持ちだと寝にふけっていると、突然家の電話が鳴りました――。

「なんなんだ?こんな時間に……」

 時計はすでに深夜の1時を回っている頃でした。眠い目をこすりながら、仕方なく電話を取りに行きました――。

「もしもし……」

「夜分遅くに申し訳ありません。わたくし○○新聞の者なのですが、お宅の隣で起った事件についてお聞きしたいのですが」

「え?隣の事件?」

「ああ、やはりご存じありませんでしたか!お隣で先ほど殺人事件があったんですよ。それでまだ犯人が捕まっていなくて。まだ近くに潜んでいるかもしれませんから、何かしらご存知でしたら情報を提供頂けるかな?という事と、安全確認の為にお電話させていただいたんです」

 当時、ウチの隣にはスナックがあったのですが、そこで従業員の方が殺害されるという事件が発生したとの事でした――。

 事件があったスナックの裏口、犯人はそこから逃走したそうなんです。実はそこ、僕が「普段網戸にしている部屋の窓」の真正面にあるんですよね。

 もしもあの日、暑いのを我慢して、また網戸の状態で寝ていたら……。そう思うと今でも背筋に冷たいモノが伝います。

 ちなみにその事件の殺人犯はもう逮捕されています。その事件はきっちりとニュースになりました。しかし不気味な事に同時期に、別の場所で同じような事件、つまりスナックでの殺人事件があったらしく、そちらの事件の方が何かと大きく報道されていました。

 今となってはその別事件の陰に埋もれてしまって、色々調べようとしてもなかなか情報が出てきません。しかし確かにウチの隣で過去に起った、実際の事件のお話でした。

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